06月
12
2012

【特集14】採用時に病歴を詐称した社員

問題社員への対応(14)(採用時に病歴を詐称した社員)

 採用選考時に会社から「健康上問題はないか」との質問に対して、「問題なし」との回答があった社員について、採用後既往歴があったことが発覚した場合は、解雇は可能でしょうか。
1.採用の自由
  会社は使用者として、「法律その他による特別の制限がない限り」、「契約の自由」「採
用の自由」を有しています。
(1)法律上の制限
    黄犬契約(組合に加入せず、または脱退することを雇用条件とする契約)
    男女の採用差別(男女雇用機会均等法5条)
    身体障害者、知的障害者の雇用努力義務(障害者雇用促進法37条) など
 (2)病歴を理由とする採用の拒否
    病歴については、基本的には思想信条と同様、採用の自由をもとに採用を拒否できると考えられます。
しかし、最近の裁判例を見ると「B型肝炎ウイルスやHIVウイルスのキャリアであること」を理由とした採用拒否について、個人のプライバシー保護の観点から社員はそのような情報をみだりに取得されない権利を有するとされ、保護される重要な法益とされています。このような病歴について裁判例では、日常生活に制限を加える必要はなく、病状が安定していれば労働制限の必要はなく、労務提供への影響は薄いとしています。
    今後は、「労務提供への影響が小さく、労働能力との関連性の薄い疾病」について 
   は、それへの罹患を理由に採用拒否することはその合理性を問われる恐れが高いと考える必要があります。
2.病歴の詐称と解雇の可否
 (1)経歴詐称による懲戒解雇
    経歴詐称とは、社員が会社に採用される際に提出する履歴書や面接において、学
   歴、職歴、犯罪歴等を詐称し、または真実を秘匿することをいいます。
    経歴詐称については、ほとんどの企業が就業規則において懲戒解雇事由として定めています。裁判においても「労働力評価に関わるだけではなく、企業秩序の維持にも関係する事項」であるとして、その詐称を理由とした懲戒解雇を有効としていますが、どのような経歴詐称でも懲戒解雇が可能であるのではなく、「重要な経歴」を詐称した場合であるされています。
 (2)病歴詐称は経歴詐称となるか
    病歴詐称が経歴詐称となるためには、(1)重大な疾病で、労働力評価や適正配置を誤らせるようなものであり、(2)そのような病歴を知っていたならば採用しなかったであろうといえるようなものであることが必要とされています。
    社員の秘匿した病歴がこの要件に該当しない場合は、解雇は困難と考えられます。
   病歴については、個人のプライバシーと病歴の業務への影響を十分検討しなければなりません。

◆ 北九州社会保険労務士 社会保険労務士法人九州人事マネジメント ◆

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