06月
12
2012

【特集17】会社支援による資格取得直後に退職する社員

問題社員への対応(17)(会社支援による資格取得直後に退職する社員)

 社員の資質向上とモチベーション向上を目的として、MBOなどの専門資格取得費用を援助する制度を検討、導入している企業があります。資格によっては長期間に渡り短期の国内・国外留学のような形で職場を離れることが必要な場合もあります。また教育機関への入学金や受講料が多額になることもあり、このような負担を会社で援助し、社員が取り組みやすい環境を作って行こうということです。
 しかし、例えば入学金や受講料を会社が支払い、研修受講中の給料も勤務として扱い全額支給したにもかかわらず、資格取得後本人が退職を申し出るようなことがあった場合、会社としてはすべての投資が「無」に帰してしまうこととなります。会社側からすれば何と恩知らずな破廉恥な行為だということになるでしょう。このような社員にはどう対応すべきでしょうか。
 
1.費用の返還請求
 労働基準法第16条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約を禁止しています。会社がいったん支出した費用について、資格取得後一定期間勤務しない場合は、損害賠償としてその費用を支払わせるという事前の約束は、労働基準法違反第16条に違反し「無効」とされています。したがって返還を求めることができません。
 
2.懲戒処分
  会社の支援制度を利用した後一定期間勤務せずに退職する行為は、信義誠実の原 
 則に違反し恩知らずな不徳な行為だということで、このような行為を懲戒処分の対象として就業規則に定めることはどうでしょう。そもそも憲法は職業選択の自由を定めており、このような規定は憲法の趣旨を阻害する内容で、この規定自体違法性が高いと考えられます。せいぜい競業避止義務で制約することまでは考えられますが、それも実際には他の会社への就職を制限するようなことは難しいと考えられます。
3.具体的な対応
(1)費用は「貸与」であることを明確にする
   費用援助が金銭消費貸借であって、原則として返済をすることが必要ですが、資格取得後一定期間勤務後は返済を免除するという内容の場合は、労働基準法第16条には抵触しないと考えられています。
   したがって、以下のことを規程、契約で明確にしておきます。
・     金銭消費貸借であること
・     貸付金の返済方法
・     返済期日
・     免除の事由
具体的には、返済期日は資格取得後2年経過後、2年経過前の退職は期限の利益を喪失し直ちに一括返済する、2年間勤務した場合には返済を免除するなどを定めます。  
  退職時の一括返済を退職金と相殺するためには、労働基準法第24条の賃金控除協定、 
  貸し付け契約の中で返済方法として退職金からの控除が定められていることが必要です。
(2)懲罰ではなく魅力ある職場でつなぎとめ
 やはり大切なことは、返済方法や懲罰的なことなど恐怖感による退職抑制ではなく、共感できる経営理念に基づいた魅力ある職場や働きやすい労働環境を作り上げ、社員がこれからもずっとここで働きたいと思わせる努力をすることではないかと考えます。

◆ 北九州社会保険労務士 社会保険労務士法人九州人事マネジメント ◆

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