06月
12
2012

【特集30】顧客の個人情報を外部で紛失した社員

問題社員への対応30(顧客の個人情報を外部で紛失した社員)

           
営業社員が社外で顧客の個人情報が入った書類を紛失した場合、その社員に懲戒処分を行ったり、損害賠償を求めることはできるでしょうか。

1.懲戒処分


故意又は過失により紛失した場合であれば、当然就業規則の懲戒規定に基づいた処分として懲戒処分を行うことは可能です。

2.会社から社員に対する損害賠償の根拠

(1)債務不履行責任(民法415条)
社員は雇用契約に基づいて会社に損害を与えないようにすべき義務を負っています。この義務に違反したものとして、債務不履行責任に基づいた損害賠償責任を追及することができます。

(2)不法行為(民法709条)
故意又は過失により他人の権利を侵害した場合は、不法行為に当たるとして、その規定に基づいて責任を追及することができます。
 
いずれの場合も、社員にその紛失について故意又は過失があることが必要であり、また会社が損害を求めうるのは、相当因果関係の範囲にある損害、つまり通常予見しうる損害に限られます。

3.全額の損害賠償を求められるか


外部に顧客情報を持ち出す場合には紛失の可能性は常にあり、情報が流出する危険性
は容易に想定できます。そのことに対して会社として紛失防止対策が全くとられていな
い中で紛失し情報が流出した場合、被害者である会社にも損害を拡大させたことに対す
る過失があるとして、過失相殺の規定(民法418条、722条2項)によって賠償額は減
じられる可能性が高くなります。

4.会社が関係者に損害賠償を行った場合、社員に損害を求められるか

(1)会社の損害賠償の根拠
会社は本人とは別に社員の使用者として使用者責任を負っています(民法715条)。
この場合、会社は社員に対して損害額を求めることができます(求償権)。

(2)社員に求償しうる範囲
判例では「その事業の性格、規模、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若
しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の
公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度」に限定されています。
(茨城石炭商事事件 最高裁一小 昭51.7.8判決)
この事件では従業員に請求できる損害賠償額を4分の1に制限しています。実務的にも会社が負担した額の数割程度に制限されるのが通常です。

◆ 北九州社会保険労務士 社会保険労務士法人九州人事マネジメント ◆

このページの先頭へ