06月
12
2012

【特集8】通勤手当を不正受給している社員

問題社員への対応(8) (通勤手当を不正受給している社員)

会社所の近くに引越しをしたのに転居の届け出を行わず、引越し前の高い通勤手当を受給し続けることは通勤手当の不正受給となります。しかし、社員は、少しでも給与の手取りを増やしたいというような軽い気持ちで、「不正受給」しているという意識が希薄な場合が多いようです。
1.通勤手当の基準の明確化
 そもそも通勤手当の支給基準が明確でなければ「不正受給」を判断すること自体が不可能となります。まずは通勤手当の合理的な支給基準を明確にすることが必要です。一般的には公共交通機関を利用する場合、自家用車を利用する場合が考えられます。それぞれの支給基準を明確にします。他に徒歩・自転車等で通勤する場合もありますが、徒歩・自転車については実費が発生しないため支給する必要性は少ないと考えられます。
2.通勤手当の不正受給のパターン
  主な不正受給事例としては次のようなものがあります。
(1)     複数の駅から通勤可能である場合に、実際に利用している駅ではなく、通勤手当が高くなる駅を届出ている。
(2)     あえて遠回りまたは高額となる公共交通機関を利用すると届け出て、実際は近道または低額の公共交通機関を利用する。
(3)     公共交通機関の乗継がないのに、乗り継ぎをするように届け出ている。
(4)     公共交通機関を利用すると届け出ているにもかかわらず、実際はバイクや自転車を利用したり徒歩で通勤したりする。
(5)     届け出ている住所には居住しておらず、届出より距離の近い別の場所(例えば同棲先など)から毎日出勤している。
(6)     近くに引っ越したにもかかわらず、住所変更届を行わず、従来の高い通勤手当を受給し続ける。
3.不正受給に対する対応
(1)事実の確認
   上記不正行為の摘発については大半が偶然による自然発覚などであり、効果的といえる方法はなかなかありません。したがって上記行為に該当する行為は「不正行為」であるということを明確に知らしめることで抑止力を働かせることが重要です。またうわさなどで情報が入った場合は放置せず、本人に間違いないかどうかの事実確認を確実に行うことが大切です。
(2)返還請求
   不正行為が発覚し、事実であった場合は本人に不正請求額の返還請求を行います。返還請求は過去10年遡って行うことが可能です(民法167条1項)が、労基法上の通常の賃金が2年の時効であることとのバランスも考え、会社として何年遡って請求するのかルールを決めておくほうがよいでしょう。
(3)懲戒処分
   不正受給額を返還したからといって、不正受給の事実が消えるわけではありません。虚偽の届出により不正受給した社員に対するペナルティを科し、また職場内ルールの徹底を図り、職場の規律を保持するためにも、就業規則の懲戒処分の規定に基づき、不正の内容の程度に応じて懲戒処分を行わなければなりません。悪質な事例を除けば、譴責や減給などの処分が妥当と考えられます。
ワンポイント
 不正受給を防衛するため次のような手段が考えられます。
(1)     本人申請の金額や距離を鵜呑みにせず、必ずチェックする。距離についてはネット検索が可能であるため、必ず行う。
(2)     定期券のコピー提出を義務付ける。(定期券の現物を会社が支給するには労働組合と労働協約を結ぶ必要があるため、労働組合のない企業の場合はできません。)
(3)     不正行為が発覚した場合の返還請求期間、懲戒処分の内容などを告知する。

◆ 北九州社会保険労務士 社会保険労務士法人九州人事マネジメント ◆

このページの先頭へ