06月
12
2012

【特集32】部下に対してパワハラを繰り返す社員

問題社員への対応 32(部下に対してパワハラを繰り返す社員)

部下に対して、「給料泥棒」「能なし」「馬鹿野郎」「いつ辞めても代りはいくらでもいるぞ」など暴言を吐く管理職に対しては、どのような対応が必要でしょうか。
 

1.パワーハラスメントの教育徹底

  一昔前には鬼のような上司がもてはやされていましたし、今もそのように考えている企業や経営者もあります。しかし、部下に対して愛情もなくただ自分の感情を思いのままにぶつけるだけで、部下の人格を否定するような言動を取る管理者は、「管理者」という立場や役割を勘違いしていると言わざるをえません。このようなパワーハラスメントが日常的に行われると部下が精神疾患に罹患したり、退職することにつながり、人的、金銭的損失は測り知れません。企業として責任をもって管理職教育を行う必要があります。

 

2.企業の責任

(1)不法行為責任(民法715条)を負う事に。
上司のパワーハラスメントが原因で部下がうつ病になったりした場合、使用者責任として被害者に対する不法行為責任(民法715条)を負うことになります。
また労働契約法5条では労働者への安全配慮義務として「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定められており、安全配慮義務違反による損害賠償責任等が問われることとなります。


(2)業務起因性が認められると「労災」の適用に。
上司のパワーハラスメントが原因で部下がうつ病になったりした場合、業務起因性が認められると「労災」が適用されることとなります。

 

3.配置転換の可否

  従業員を採用する場合に職種・職務内容・勤務地が限定されている場合を除き、企業は人事権の内容として配転命令権を有しています。配転命令権は権利濫用でなかれば有効とされます。
  したがって、上司がたびたび部下に暴言を吐き、部下が精神疾患に罹患したり休職した場合には、良好な職場環境を保持するために配置転換を行う必要があります。また、配置転換により他の職場でも同じことが繰り返される恐れがあったり、実際に繰り返されている場合には、管理職としての適性や資質に欠けるものとして役職の降職も検討しなければなりません。
 

4.懲戒処分の可否

(1)就業規則の規定整備
   懲戒処分を行うに当たっては、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておく必要があります。(フジ興産事件 平15.10.1最高裁判決)したがって、パワーハラスメントを定義し、それに該当する場合は懲戒事由になることを明示しておきます。明示規定がない場合には「職場の風紀秩序を乱す行為」なとの規定があればそれに含めて考えることもできますが、明示するように改正を行うことが望まれます。
 
(2)懲戒処分の妥当性
 懲戒処分の根拠規定がある場合であっても、懲戒処分が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念用相当であると認められない場合は懲戒権の濫用として無効となります。(労働契約法15条)
 上司がたびたび暴言を吐き、その結果部下がうつ病になったり、休職に追い込まれてしまった場合は、上司に対する懲戒処分は可能と考えられます。
 ただし、それまで企業として当該上司に注意をまったくしていなかった、見て見ぬふりをしていたというような状況があると、懲戒処分の妥当性に影響を与えることも考えられます。日ごろから管理者教育をしっかりと行い、問題がある上司には個別に注意・指導を行い改善を促すことが大切です。
 
 
 ◆ 北九州社会保険労務士 社会保険労務士法人九州人事マネジメント ◆

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